※仕訳と数字は、考え方をつかむための一般的な例です。自社の勘定科目や税務・社会保険の扱いは、顧問の税理士・社会保険労務士にご確認ください。
この記事の結論
前払いした時点では「仮払金」などで仮に記帳し、給料日に、その月の給与総額を「給料手当」で計上したうえで、前払い分を差し引いて精算するのが一般的な考え方です。源泉徴収や社会保険料は、給料日にその月の総額で計算します。
- 勘定科目:仮払金(または立替金など)。すでに働いた分の給与なので「貸付金」にはしない
- 立替払い型:サービス会社が立て替えた分は、会社が後日精算するまで「未払金」などで管理する
- 手数料:従業員負担か会社負担か、差し引くタイミングで仕訳が変わる。給与から差し引くなら労使協定が必要
- 給与明細:総支給額はそのまま。控除の欄に「前払い精算額」などを書いて差し引く
前払いの件数が増えるほど、どの月の給与から、いくら差し引くかを正確に管理することが大切になります。管理画面で差し引く月と金額がすぐわかるサービスを使うと、給与計算のミスを防げます。
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目次
仕訳の前に:給与前払いは「貸付け」ではない
給与前払いは、従業員がすでに働いた分の給与を、給料日より前に支払うものです。お金を貸しているわけではないので、仕訳でも「貸付金」とは分けて考えます。
| 比べるところ | 給与前払い | 従業員への貸付け(前借り) |
|---|---|---|
| お金の中身 | すでに働いた分の給与 | これから働く分や、給与とは別のお金 |
| 返し方 | 給料日の給与で精算する | 返済の約束にしたがって返す |
| 仕訳の考え方 | 仮払金などで仮に記帳し、給料日に給料手当と精算 | 従業員貸付金など |
| 注意点 | 上限は働いた分まで | 労働基準法で、前借金と賃金の相殺は禁止されている |
※編集部が整理した一般的な考え方です。サービス会社が立て替える仕組みについては、2018年に経済産業省が、勤怠実績にもとづく賃金相当額を上限とするなどの条件のもとでは貸付けには当たらないとの考え方を示しています。法律面の整理は給与前払いは違法?導入前に知っておきたい仕組みと注意点でまとめています。
使う勘定科目の選び方
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| 勘定科目 | 使う場面 | ポイント |
|---|---|---|
| 仮払金 | 前払いしたとき(会社の口座から支払った場合) | 給料日に精算するまでの仮の科目。月をまたいで残さないようにする |
| 立替金 | 仮払金の代わりに使う会社もある | 社内でどちらかに統一することが大切 |
| 未払金 | 立替払い型で、サービス会社に後日精算する金額 | サービス会社への精算が終わったら消える |
| 給料手当(給与) | 給料日に、その月の給与総額を計上 | 前払いの有無にかかわらず総額で計上する |
| 預り金 | 源泉所得税・住民税・社会保険料、給与から差し引く手数料 | 納付・支払いのときに消える |
| 支払手数料 | 会社が手数料を負担するとき | 福利厚生として全員に同じ条件で負担する場合の扱いは税理士に確認 |
※勘定科目の名前は会社によって異なります。社内で統一し、顧問税理士と確認してください。
自社払い型の仕訳(数字の例)
会社が自分の口座から従業員に前払いする場合の例です。月給30万円の従業員に、10月15日に5万円を前払いし、10月25日が給料日とします。源泉所得税・住民税・社会保険料の合計は、例として4万5千円とします。
① 10月15日:5万円を前払いしたとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仮払金 | 50,000 | 普通預金 | 50,000 |
従業員の口座に5万円を振り込んだ時点では、まだ給与の計算が終わっていないので、仮払金で記帳します。
② 10月25日:給料日
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給料手当 | 300,000 | 預り金(源泉所得税・住民税・社会保険料) | 45,000 |
| 仮払金 | 50,000 | ||
| 普通預金 | 205,000 |
給与は前払いに関係なく総額30万円で計上します。そこから税金や社会保険料と、前払いした5万円を差し引き、残りの20万5千円を振り込みます。仮払金はここでゼロになります。
※金額はすべて説明のための例です。
立替払い型の仕訳(数字の例)
サービス会社が会社に代わって前払いの資金を立て替え、会社は後日まとめて精算する方式です。同じく、10月15日に5万円が前払いされ、会社は10月末にサービス会社へ精算するとします。
① 10月15日:サービス会社が従業員に5万円を前払いしたとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仮払金 | 50,000 | 未払金(サービス会社) | 50,000 |
会社のお金はまだ出ていませんが、従業員への給与の一部が支払われたので、仮払金と未払金で記帳します。前払いの記録は、サービスの管理画面や利用明細で確認します。
② 10月25日:給料日
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給料手当 | 300,000 | 預り金(源泉所得税・住民税・社会保険料) | 45,000 |
| 仮払金 | 50,000 | ||
| 普通預金 | 205,000 |
給料日の処理は自社払い型と同じです。
③ 10月末:サービス会社に精算したとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払金(サービス会社) | 50,000 | 普通預金 | 50,000 |
サービス会社からの請求にもとづいて支払います。精算の時期や金額の内訳は、契約や請求書で確認してください。
※金額はすべて説明のための例です。前払いのたびに記帳せず、月末に利用明細をもとにまとめて記帳する運用もあります。
手数料の仕訳:誰が、どう負担する?
前払いの手数料は、従業員が負担するか、会社が負担するか、どのタイミングで差し引くかで仕訳が変わります。
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| パターン | 中身 | 仕訳の考え方(例) |
|---|---|---|
| A:振込時に差し引かれる(従業員負担) | サービス会社が、手数料を差し引いた金額を従業員に振り込む | 会社の仕訳は申請額をもとに考える。会社の帳簿に手数料は出てこないことが多い(精算額の内訳は請求書で確認) |
| B:給与から差し引く(従業員負担) | 前払いの額と手数料を、給料日の給与からまとめて差し引く | 給料日に手数料分を「預り金」で受け、サービス会社への支払い時に消す。賃金控除の労使協定が必要 |
| C:会社が負担する | 福利厚生として、手数料を会社が払う | 「支払手数料」などで処理。全員に同じ条件かどうかなど、扱いは税理士に確認 |
※編集部が整理した一般的な考え方です。どのパターンになるかは、利用するサービスの仕組みと契約で決まります。
パターンBの例:手数料1,000円を給料日の給与から差し引くとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給料手当 | 300,000 | 預り金(税金・社会保険料) | 45,000 |
| 預り金(前払い手数料) | 1,000 | ||
| 仮払金 | 50,000 | ||
| 普通預金 | 204,000 |
手数料の預り金は、サービス会社に支払ったときに「預り金/普通預金」で消します。
※金額はすべて説明のための例です。
源泉徴収・社会保険料・年末調整の考え方
前払いのたびに計算するのではなく、給料日にその月の給与総額をもとに計算する運用が一般的です。前払いがあっても、税額表を当てはめる金額は総額のままです。
特別徴収の金額は毎月決まっているので、前払いの有無で変わりません。給料日にいつもどおり差し引きます。
給与総額をもとに計算するので、前払いの有無で変わりません。
1年間の給与の総額は前払いの有無で変わらないので、年末調整への影響はありません。
※一般的な考え方です。具体的な計算や運用は、顧問の税理士・社会保険労務士にご確認ください。
「前払いしても、給与計算そのものは変わらない」
前払いは、給与の一部を先に渡しているだけです。給与の総額、税金、社会保険料の計算は、これまでどおり給料日にまとめて行い、最後に前払い分を差し引くだけ。この流れを押さえておけば、給与計算ソフトの設定も「控除の項目を1つ増やす」だけで済むことが多いです。
給与明細と賃金台帳の書き方
給与明細では、総支給額はそのままにして、控除の欄に前払いした分を書くのが、従業員にもわかりやすい書き方です。
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| 給与明細の項目 | 金額(例) | 書き方のポイント |
|---|---|---|
| 基本給など(総支給額) | 300,000円 | 前払いの有無にかかわらず、いつもどおり |
| 源泉所得税・住民税・社会保険料 | 45,000円 | いつもどおり総額をもとに計算 |
| 前払い精算額 | 50,000円 | 「給与前払い分」「既払い額」などの項目名で、前払いした合計額を書く |
| 前払い手数料(パターンBの場合) | 1,000円 | 給与から差し引く場合だけ。項目を分けて書く |
| 差引支給額(振込額) | 205,000円(Bの場合は204,000円) | 実際に給料日に振り込む金額 |
※金額はすべて説明のための例です。賃金台帳にも、総支給額と控除の内訳を同じように記録しておきましょう。
従業員への説明が、いちばんのトラブル予防
「給料日の振込額が思ったより少ない」という問い合わせは、前払いを始めた直後によく起こります。明細の見方と、前払いした分が給料日に差し引かれることを、事前に案内しておきましょう。そのまま使える従業員向けの案内文は、給与前払いの注意点と案内文の例にまとめています。
月をまたぐとき・決算期末の注意点
締め日が月末で給料日が翌月25日の場合、10月に前払いした分は、10月分の給与(11月25日払い)で差し引くのか、といったルールを明確にしておきます。働いた月と差し引く月がずれると、計算ミスの原因になります。
月末に仮払金の残高を確認し、給料日に精算されていない分がないかをチェックします。
期末時点で、まだ精算していない前払い分がある場合は、未払給与(未払費用)などとの関係を整理しておきます。決算の処理は顧問税理士と確認しましょう。
退職月に前払いがある場合は、最後の給与で精算しきれるかを確認します。前払いの上限を働いた分の範囲にしておくことが、トラブルを防ぐいちばんの方法です。
業務委託費を前払いしたときの処理
業務委託のスタッフや協力会社への報酬を前払いする場合は、給与ではなく外注費などの取引として処理します。
① 前払いしたとき(確定した報酬の一部を支払う)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仮払金(または前払金) | 30,000 | 普通預金・未払金など | 30,000 |
② 月末に報酬が確定したとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 外注費 | 100,000 | 仮払金(または前払金) | 30,000 |
| 未払金 | 70,000 |
確定した報酬の総額を外注費で計上し、前払い分を差し引いた残りを、支払期日に支払います。
※金額はすべて説明のための例です。個人へのデザイン・原稿料など、源泉徴収が必要な報酬を前払いする場合は、支払いのたびに源泉徴収が必要になることがあります。インボイスの扱いも含め、税理士に確認してください。運用の注意点は業務委託・フリーランスへの報酬前払いの方法でまとめています。
前払いの管理を楽にする方法
前払いの件数が増えると、「誰に、いつ、いくら前払いして、どの月に差し引くか」を手作業で管理するのは大変です。前払いサービスを使えば、この管理をまとめて任せられます。
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| 比べるところ | 自社で個別に前払い | 前払いサービス(PAYMOの例) |
|---|---|---|
| 前払いの記録 | 担当者がエクセルなどで管理 | 管理画面に申請・振込の履歴が残る |
| 差し引く月と金額 | 給与計算のたびに集計 | 給与・報酬を差し引く月と金額がすぐにわかる |
| 振込の手間 | 担当者が毎回振り込む | 即日振込で自動 |
| 会社の費用 | 振込手数料と担当者の時間 | 月額費用0円 |
| 対象 | 給与・報酬ごとに手作業 | 給与・業務委託費のどちらにも対応 |
※PAYMOの公式サイト(2026年10月時点)の掲載情報をもとに編集部が整理しました。
PAYMOの3つのプラン(仕訳の型との対応)
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| デポジット型 | 立替払い型 | 直接払い型 | |
|---|---|---|---|
| 月額費用 | 0円 | 0円 | 0円 |
| サービス利用料(1申請) | 3% | 〜10% | 0〜3% |
| 振込手数料(1申請) | 500円 | 500円 | 500円 |
| 前払いの資金 | PAYMO側の口座から振込 | PAYMOが立て替え(与信審査あり) | 会社がセブン銀行の口座に事前に用意 |
| 仕訳の考え方 | 精算方法は契約で確認 | この記事の「立替払い型」の考え方 | この記事の「自社払い型」の考え方 |
| 導入まで | 最短3日 | 最短3日 | 約1か月程度 |
※料金は2026年10月時点のPAYMOの公式サイトの掲載情報です。サービス利用料と振込手数料は申請した人が負担し、振込金額から差し引かれます(この記事の手数料パターンA)。精算の時期や請求の内訳は、契約時に確認してください。「仕訳の考え方」は編集部の整理です。
導入前に経理・給与担当が決めておくこと
- 前払いを記帳する勘定科目(仮払金・立替金など)を統一した
- どの月の給与から差し引くか、のルールを決めた
- 手数料の負担者と、差し引くタイミングを確認した(給与から差し引くなら労使協定)
- 給与計算ソフトに「前払い精算額」の控除項目を追加した
- サービス会社への精算の時期と、請求書の受け取り方を確認した
- 月末に仮払金の残高をチェックする流れをつくった
よくある質問
本記事は、一般的な会計・給与計算の考え方、労働基準法、経済産業省のグレーゾーン解消制度への回答(2018年)、PAYMOの公式サイトなどをもとに、編集部が2026年10月22日時点の情報で作成しています。仕訳・金額・給与明細はすべて説明のための例です。勘定科目や税務・社会保険の扱いは会社によって異なるため、顧問の税理士・社会保険労務士にご確認ください。
まとめ:「仮払い→給料日に総額で精算」を押さえれば迷わない
給与前払いの会計処理は、前払いした時点では仮払金などで仮に記帳し、給料日にその月の給与総額を計上して、前払い分を差し引いて精算する、という流れが基本です。源泉徴収や社会保険料は給料日に総額で計算するので、給与計算そのものは大きく変わりません。立替払い型なら、サービス会社への精算を未払金で管理します。
迷いやすいのは、手数料の扱いと、どの月の給与から差し引くかの管理です。導入前に社内のルールを決め、差し引く月と金額がすぐわかる管理画面のあるサービスを選ぶと、経理と給与担当の負担を小さく抑えられます。

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